『人は死なない』矢作直樹 その②

『人は死なない』矢作直樹 

2023年9月27日 第32刷発行

その①でも延べましたが、矢作先生は、東大の名誉教授で、それまで軽視されていた総合救急医療とその教育体制を東大病院に作った人です。

 

②では、この本の第三章の「非日常的な現象」から一部を引用して論じます。

 

矢作先生が救急外来で治療した20歳代の女性のBさんについての話です。

(以下の『』は矢作先生の本からの引用で矢作先生の言葉です)

 

矢作先生

『Bさんは、・・・状況から、マンションのどこかから墜落したらしい。・・・救急外来に到着した時はショック状態だった。このとき、Bさんの様子が尋常でないことに気付く。・・・意識が異常に晴明だった』

 

・矢作先生は、最初からBさんに特別な印象を受けたようです。

 

 

矢作先生

『入院24日目、気管切開チューブを発声ができるチューブに入れ替える・・・翌日、意識がしっかりしてきたので精神科の診察を受けたところ、・・Bさんは「飛び降りは自殺しようとしたものではなく、霊に乗り移られたためです」と言った。当時、うかつにも私はこの言葉にあまり注意をはらわなかった』

・矢作先生は「うかつにも」と言っていますが、「霊に乗り移られた」と聞いたら、誰でも、それは嘘か妄想だと判断するでしょうね。

 

矢作先生『入院29日目の夜から人工呼吸器の使用を止める。・・・入院1月目、本人の希望により精神科受診をしたところ・・・明らかなストレス因子も特定てきない・・・特に治療を必要としないことになった』

・Bさんには精神病はないようです。そしてBさんは、入院99日でリハビリ病院に転院します。

矢作先生はその5年後に、Bさんが外傷性動脈瘤を東大病院で手術した時にも食堂で会っています。

その後、矢作先生は、Bさんのことが記憶にひっかかっていて、Bさんに連絡をとって話を聞くことになります。

矢作先生は、Bさんの印象にギャップを感じていたのです。しかし、先生以外の第三者がBさんの奇妙な話を聞くことはなかっただろうし、Bさんも話をしなかったかもしれません。

 

 

(以下の『』は、矢作先生が聞いたBさんの話です。それに私の解説をつけます)

 

Bさん

『私は人に相談を受けることが多く、そういうときにはすごく感情移入してしまう。そんな性向も、金縛りのような現象を受け入れやすくしていたのかもしれません。
 私の中に「他人」が入ってくるのを始めて意識したのは、ある日ひどい金縛り状態になって自分の体が自分のものでないと感じたときでした』

・Bさんは霊的に敏感な体質のようです。しかし、こういう体質の人は、勘が良かったりしますが、不都合を引き寄せることも多いようです。Bさんは「他人」と言う表現をしていますが、これは霊ですよ。

 

Bさん

『頻繁に「他人」に直接の話しかけられているような感じがするようになり、それが夜にまで及ぶようになっため、とうとう眠れなくなり疲れてへとへとになりました。そうこうしていると、ある女性が「あなたの体を借りたい」と私の頭の中に話かけてきました。その女性に「出て行って」と言おうとすると、泣き落としされてなかなか毅然と追い出すことができませんでした』

・霊が入り込んできたのです。Bさんは優しく同情心があります。しかし、毅然と追い出すべきでした。「泣き落とし」とは、その霊は自己中心的ですね。

なぜなら、そんな霊は、人に不都合をもたらしていることを分かっているはずだからです。Bさんのように、同情心が強すぎるのも、悪を助長することがあります。

 

Bさん

『そんなことが続き、自分が変だと気付いて何とか助けを求めたかったのですが、取り付いている「他人」に「あなたの夫に危害を加える。あなたをもっとひどい状態にする」と脅され、どうすることもできませんでした』

 

・そして、今度はこの霊は脅しに入っています。こうなると悪霊ですね。

Bさんを弱いと思うかもしれませんが、人間は弱点をつかれて精神的に追い込まれると、どうすることもできなくなりがちです。しかし、脅されても断固として「出ていけ」と出ていかせるべきでした。


Bさん

『いつ自分が実家からマンションまでやって来たのかまったく記憶がなく、飛び降りようとした記憶もありませんでした。本当に、気付いたときには落下するところでした』

・信じないかもしれませんが、実は、自殺の場合、霊にのりうつられて自殺する場合も多いのです。

 

Bさん

『回復後、病院に搬送されてからのは億もありません。回復後、救急外来で医療スタッフと言葉を交わしたと、うかがいましたが、本当にまったく何も覚えていないのです。ICUで回復した時には普段の自分に戻っていましたが、このとき「自分が記憶を失っている時に人に危害を加えるようなことがなくて本当によかった」と心から思ったものです』

 

・通常は霊に乗り移られる場合には、乗り移られる方にも霊と同調する心があると言われます。しかし、Bさんの話を信じるなら、Bさんには、それほどマイナスの心はなかったと思われます。それなら、なぜBさんは良くない霊に乗り移られたのか?

 

 

Bさん

『いま振り返ると、自分には外から「他人」が入ってこれる「場所」があったのではないかと思います。ただ、夫は私の中に「他人」が入ってくることがわかるようでした。というのも、私が知るはずもない夫の事情について、私が普段とは違ったしゃべり方で話すからです』

・先にも述べましたが、Bさんは霊媒体質だったようですね。それは危険なことなんですね。どうやって防げはいいのか。

 

Bさん

『この事故があって以来、私は何としても一生懸命生きようという強い意志を持って過ごしてきました。そのせいか、以前のように「他人」に入り込まれるようなことはなくなりました』

 

・強い意志が大事なようですね。Bさんのように直接に霊に乗り移られなくても、なんらかの影響を受ける場合もあるからです。

 

Bさん

『それからは自分をしっかり持ち「他人」に依存しないようにするとともに、あまり「他人」の話に引っ張られないように心がけるようにしました』

自分をしっかり持ち、他人に依存しないようにするということですね。Bさんは「他人」と言っていますが、霊のことです。しかし、この教訓は生きている他人に対してでも同じことだと思います。

 

Bさん

『かつての私は人の幸、不幸を見た目で判断していましたが、自分が今のような状態になってみてはじめてそれが誤りで、本人が自らの置かれた現実を受け入れ肯定していればそれでいいのだと知りました』

 

・これは一つの悟りですね。Bさんは、この事件というか経験で、一つの悟りを得ましたね。人は、親や他人や世間の評価に左右されて、自分と人生を見失ってしまいうことが多いです。だからBさんのこの悟りは普遍性があります。

Bさん

『私は今、自分の置かれた世界のすべてを受け止めることができて、とても幸せです。「あるがまま」に受け止める。悪い状況は永遠に続くわけではなく、その後はより良いものが得られるんだと実感しています。辛いときには・・・「大丈夫、大丈夫、大丈夫」と心に念じると、不思議に食欲がわき、ぐっすり眠れ、そして元気になります』

Bさんは下半身麻痺のままですが、これもBさんの得た悟りですね。

このBさんの霊的な体験をどう考えるか。これが矢作先生の主題ですね。

 

矢作先生のような立場の方が霊やオカルト的なことを発言するのは、損だと思うのてす。だから、矢作先生が後にBさんから話を聞いて、しかも、このように発表したことは、矢作先生の側の使命に関係していると思います。だからこそ、矢作先生はBさんに興味を持って話を聞きにいったのでしょうね。

また、矢作先生の他の著作を読んでも、先生の前世は医者や学者でなく、お坊さんか修道士だったろうと思ってしまいます。前世の存在を信じるなら(笑)。前世の存在を信じないなら、もともと、そういうタイプの人だということでしょうね。

『人は死なない』矢作直樹 その①

『人は死なない』矢作直樹 その①

2023年9月27日 第32刷発行

 

前回まで、血圧のことを調べて、その関係の医者の本を紹介していました。しかし、今回、たまたま東大病院の医者の矢作先生という方の本を買いました。ただ、医者の本でも病気の話ではないです。

 

 

続けて血管と血液の本を読んで紹介していく予定ですが、今回は、その医療の話の休憩と口直しに、全く違うテイストの本を紹介します。

 

『人は死なない』とは、どういうことか。矢作先生は、この本の最後で次のように結論を言っています。

「寿命が来れば肉体は朽ちる、という意味で「人は死ぬ」が、霊魂は生き続ける、という意味で「人は死なない」。私は、そのような考えています」

なんだ、オカルトか、と言われたら、その通りです。

 

ただ、この本の価値の一つは、矢作先生が東大の名誉教授で、東大病院に、それまで軽視されていた総合救急医療とその教育体制を作った人だということです。

そういう先生が、オカルト的なことを言っているということから、読まれているのだろうと思います。ところで、私の個人的なことを言うと、私は、万冊かの蔵書の中に千冊以上のオカルト的な本を読んでいます。その私には、もの足りない内容です。つまり、オカルトとしては、それほどハードでもなく内容が深くもないのです。

しかし、この本の初版が2011年で、私が買った本が2023年9月27日第32刷発行なので、多くの人に非常に読まれている本です。

この本の副題として「ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索」というような高尚な曖昧な副題がつけられています。そういう控えめで懐疑的な点が、この本がよく売れた理由だと思います。

 

思い出したのですが、この本を知ってAmazonで注文したのは、喫茶店朝日新聞を手に取って書評か本の宣伝を読んだからでした。なるほど、朝日新聞の書評に合いそうな副題と著者の経歴です。

 

しかし、著者の本質は、東大の名誉教授だということではありません。文章の雰囲気から、著者は無欲の人だということがわかります。本来の坊さんか修道士のような人です。矢作先生の本質は・・・。

 

しかし、社会的には、矢作先生は、東大病院の緊急医療の体制を作った医師で、たまたま東大医学部の名誉教授にもなったような人です。
そういう著者があえて正直にオカルト的なことを書いたというのが、この本の価値の一つだと思います。オカルト的なことを書くのは、得になりませんからね。宣伝や得にならないことを書くというのは、徳のある著者である場合も多いのです。損得を越えていますからね。今回言いたいのは、このことです。

次回は、私がこの本で面白いと思った話を、2つ3つ具体的に紹介しようと思います。

血圧の話 結論 7冊の本を読んで

7冊の血圧の本を読んで、どう感じたか。

 

 

 

どうも医学は、権威の学問のような性質があって、定説を覚えるという傾向か強いと思いました。それは法律学なんかは、そうですね。

 

つまり、権威や定説をそのまま暗記するという傾向がわりに強いのでしょう。

 

私が読んだのは一般向けの本ですが、学術書ならもっとその傾向が強いでしょうね。

 

実際の診察でも、医師は、マニュアルの基準どおりやれば問題はなおわけてす。

 

たくさんの患者に、マニュアル通りに流れ作業で薬を出し続ければ、患者にとっても簡単ですし、経営的にもよく、また責任も問われません。

しかし、この7冊の本の著者の先生方は皆さんが、あえて食事や運動を指導し、降圧剤を(すぐに)出さなかったり、徐々にやめさせたりしています。

こちらの方が、訴訟とかになれば危険が多いし、手間もかかり面倒だと思います。この無意味で、これらの先生たちは、ありがたいと思います。

 

この7冊の本は、松本先生の「血圧心配性ですよ!」を除いて、こういう主張の本を読もうと思って選んだものではありません。アマゾンの上位から売れている本を適当に選んだものです。 

 

その結果、食生活や運動の重要性を説いている本ばかりだったのは、人々のニーズもあるし、実際に診察している真摯な医者の体感があるのだと思います。機械的に薬だけ出しておけば医者も楽なはずなのですが。

 

もちろん、高血圧が血管を傷つけることもあると思います。しかし、健康な若い血管でであれば、一時的にすごい高血圧になっても平気なはずです。耐えられる高血圧は、200とか300どころではないはずです。

しかし、私のように動脈解離になる血管は動脈硬化が進んでいて、破れやすいのです。それで、私は、どうするのか。

まず素人がわかったこと
一般論としては、血圧が問題でなく、動脈硬化が問題であるとわかりました。そして、高血圧は動脈硬化の原因というより、動脈硬化が高血圧の原因でした。

 

しかし、高血圧の人口は4300万ほどいて、大動脈解離は年間9000人くらい発症します。ということは私は、高血圧の人の0.02%にあたる動脈硬化の患者なわけです。

 

そして、大動脈解離で血管が破れようとするのを防ぐためには、論理的には血圧が低い方がいいはずです。高いと切れやすいはずです。


ということは、薬で血圧を下げておいて、その間に本当の原因である動脈硬化を改善するのがいいと思います。そして動脈硬化が改善したら指標としての血圧も下がるはずです。

こういう平凡な結論なりました。血圧の話から入ったのは間違いでした。

 

ですから、次は、動脈硬化の改善や血管の話を調べていきたいと思います。

血圧の話その7 『「抹消血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる』

『「抹消血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる』

池谷敏郎
2019年11月30日第14刷発行

血圧の話その7

 

まず著者の自己紹介を引用します。

「池谷医院院長の池谷敏郎です。本書は、私が初めて書く「血圧」の本です。・・・私はこれまで「血管を鍛える」、あるいは「血管の健康」を題材ととした本を執筆したり、テレビなどで解説したりする機会が多くあったため、血管の先生というイメージを持たれている方もいらっしゃるでしょう」

血圧については
「高血圧は、動脈硬化を進める『最大の危険因子』と考えられているのです」

と「考えられている」という言葉で定説をそのまま述べています。

しかし、その直後の見出しでは『血圧は血管の状態を表す"鏡"』です。

 

 

血圧の新基準に関しては、定説通りの主張です

「やはり血圧が高い人ほど脳卒中心筋梗塞などの「血管事故」で死亡する率が高いことが明らかとなってきたのです。そしてその数値は「上の血圧が140、下の血圧が90」で、これを超えると急に、死亡リスクが高まるのです」

 

しかし、何冊かの本を読んだ私は、実は、この点に対してはすぐに疑問を言えます。

・例えば、80歳の人で上の血圧が150の人は、降圧剤を飲むべきでしょうか?

・この主張を裏付けるデーターや引用は、この本にはありません。新しい調査やアメリカの論文とか出たのでしょうか?

・また、「血管事故」の他も含めた全部の死亡率や自立度で考えるとどうなのか?

・年齢別ではどうなるのでしょうか?

・血圧別に、降圧剤を飲んだ人は飲んでない人より、死亡率や自立度が良いという統計はあるのでしょうか?

などの疑問はあります。

しかし、具体的にどうすればいいのか、となると、池谷先生も、今まで読んできた先生方と同じなんです。この血圧の基準についてそれぞれ考え方は違いますが、具体的な方法は、食べ物と運動なんですね。

さらに、池谷先生の特徴は、血圧を下げるには「末梢血管を開くこと」です。

 

そのために食べ物では、
・LTP(ラクトトリペプチド) ブルーチーズやゴーダチーズや米麹

ブルーチーズは青カビのチーズで塩分も強いし癖があります。ゴルゴンゾーラチーズを買いましたが、これはイタリアのブルーチーズの一種です。実は、私は好きです。ゴーダチーズというのを始めて意識して買ったのですが、外見は普通のチーズで値段もブルーチーズより安いです。私の買ったのは、オランダ製でしたが、臭いの癖は少しありました。


・GABA(ギヤバ)トマトやお茶、大豆、大豆もやし、きのこ類、発芽玄米
・ケセルチン タマネギ、アスパラガス、お茶
EPA(エイコサペクタエン酸)イワシやサバなどの青魚

運動では、ゾンビ体操など。ゾンビ体操は池谷先生のオリジナル体操です。伊賀瀬先生の8秒ジャンプに近い体操のようです。

 

 

それでは、池谷先生は具体的な降圧剤の投与については、どう言っているのか。

 

「1〜2か月の間、食事や睡眠を良好に保つようにしていても高血圧が続くようであれば、まずは薬を使って「安全」を確保した後で、今度は薬を飲まなくていいようにさらなる体質改善、生活改善をしていきましょう」と言っています。

具体的な方法は、今まで読んできた他の先生方もそうですし、降圧剤に否定的な先生と比べても、正反対とか真逆の結論ではなく、似ています。つまり、具体的なやり方は、どの先生の結論も似ています。

しかし、もし血圧が真の原因であれば、
つまり「120/80未満の場合がもっとも循環器病のリスクが低い」というのが本当であれば、120以上の人はすぐに薬で下げればいいはずだと思うのです。

さらに池谷先生「さらには薬を飲んでいるから大丈夫と安心してしまうのではなく、薬を飲んでいても生活改善は不可欠です」と述べています。

高血圧が主たる原因であるなら、薬で高血圧が下がれば、それでいいはずです。降圧剤をやめていったり、生活習慣の面倒な指導はいらないはずです。それとも降圧剤の副作用は意外に大きいのでしょうか。

たぶん、池谷先生も他の先生方も、薬で血圧を下げているだけの患者を多く診てきたのだと思います。また血圧の薬をのんだ人と飲んでいない人の全体的な健康についても、多くの人を感覚で比べることができているのかもしれません。

そのため、食事や運動など、患者にとっても医師にとっても面倒なことを指導されているのではないでしょうか。そうだとすれば、ありがたいことです。

 

 

私は今まで7冊の本を読んで、どうも本当の問題は、血圧ではなく血管にあるのではないかと思うようになってきました。

この意味で池谷先生の「血圧は指標である」、「末梢血管を開くこと」というような言葉が、本質をついているかもしれないと思いました。

つまり、高血圧が主な原因であり、池谷先生の視点では、末梢血管を開くことがその血圧を下げることだというより、末梢血管を開くことが動脈硬化の改善になるのではないかと、高血圧はその原因というより、むしろ動脈硬化の結果か指標ではないのかと。

血圧の話その6(大動脈解離になったので) 『高血圧は薬で下げるな!』浜六郎

『高血圧は薬で下げるな!』2006年6月5日11版発行 浜六郎

血圧の話その6

浜六郎先生の経歴は変わっていて、阪大医学部を出て大阪府衛生部を経て阪南中央病院に勤務しています。
その後に、独立医薬品情報誌を創刊したり、医薬品の情報収集や広報活動をしています。

しかし、『高血圧は薬で下げるな!』とは、なんとも過激な題名です。

実は、血圧の話その3で石原先生が、「降圧剤を急に服用を中止すると、反動的に血圧が上昇することがあるので、そうしたムチャは禁物である」と言って、「薬のやめ方を含めて参考になる」とこの本を紹介されていました。

それで、過激な題名のこの本を注文してみました。

確かにそのことについては、

「急に降圧剤をやめると、急激な高血圧が引き起こされる危険もあります。時間をかけて血圧をはかりながら降圧剤を減らし、血圧が上がる原因を取り除きながら、やがて完全に降圧剤をなくすことがいちばんよい方法です」以下、薬の種類や必要期間など具体的に書かれていました。

ところで、降圧剤はやめていく方がいいという、その元になったメインの主張はどのようなみのでしょうか。

まず、浜先生は言います。
「驚くべきことに、現在薬を処方している軽症・中等症・そして現在の基準では重症高血圧患者においてさえ、降圧剤で血圧を下げることによって寿命が延びたといえる確実なデーターは、日本でも外国においてもないのです」

もしこれが本当だとすれば、降圧剤が広く使われてから何十年もたつのに、不思議なことです。

 

さらに第2章で浜先生は、JATE研究、茨城県調査、NIPPON研究、福岡県久山町、秋田県大阪府八尾市の調査を引用します。

そして「NIPPON研究では、61歳以上の人でもさすがに上が180以上、下も110以上になると、心筋梗塞脳卒中が増えるという結果が出ています。しかし、この調査では、最小血圧が60〜・・・109で比べてみると、循環器の病気による死亡率でさえほとんど変わりませんでした」
最小血圧とは血圧の下のことです。
「とくに70歳以上では、上が160〜180、下が90〜100程度でも降圧剤は全く不要で、無理に血圧を下げるには及ばないことは確かです」

かなり過激な発言のように見えます。しかも、これは統計の分析です。だから、個人の特殊性はあります。例えば、極端な高血圧の人や血管が破れようとしている人は緊急に薬で血圧を下げる必要があることは前提です。私も大動脈解離をやったので、統計の一般的な答えとは別に、個別の事情はあるはずです。

 

また、浜先生は、この本で肥満や食生活や運動などにも言及しています。つまり、血圧を下げるなと言っているのでもなく、薬で無理に下げる必要はないと言っているのです。

だから、今まで読んできた他の先生たちと比べて、総論は真逆に見えたりしますが、現実の臨床は、さほどの違いはなかったりするのではないか。

例えば、愛媛大学教授の伊賀瀬先生は、
「降圧薬だけに頼るのは危険!生活習慣の改善がおろそかになるためです」と述べています。

しかし、血圧が原因なら薬で下げても生活習慣で下げても同じはずです。良い薬を選べばいいだけの話です。

また伊賀瀬先生は、「私は高齢の高血圧の患者さんには、最初は血圧を基準値内にさげるための薬は処方しません」と言いきっています。

山口醫院の山口貴也先生は、もっとはっきり言っています。
「薬を飲んでも飲まなくても病気になる確率は変わりません。しかし・・・生活習慣の改善で血圧が下がれば循環器疾患(心臓血管疾患や脳梗塞)の危険性は下がるということです。ですが、薬を飲んで生活習慣が変わらなければ、副作用の危険性だけ背負いこみ利点は何もないのです」

やはり真の原因は、血圧でなく、血管にありそうだと分かってきました。

しかし、『高血圧は薬で下げるな!』の題名はインパクトが強く、多くの人にも過激に感じると思います。なので、もう1冊、違和感のない題名の血圧の本を読んでみます。くどいですが、慎重に。

血圧の話その5(大動脈解離になったので)『血圧がみるみる下がる!8秒ジャンプ』

『血圧がみるみる下がる!8秒ジャンプ』2022年5月23日第2刷発行   伊賀瀬道也

血圧の話その5(大動脈解離になったので)

副題は「国立大学教授の高血圧専門医が開発した新メソッド」です。

著者の伊賀瀬道也さんは、副題にもあるように愛媛大学の教授兼付属病院の医師です。附属病院での臨床の経験の多い先生のようです。

『血圧がみるみる下がる!8秒ジャンプ』は、教授らしくない題名ですが、個人的には好感を持てます。


まずは、最初に効果を見ていきたいと思います

この本に書いてある効果は次のようなものです。

〇75歳男性 元大学教授 150/70で高血圧と診断
・減塩
・魚油のサプリメント
・8秒ジャンプ
半年後
・血圧が120/60。 200mgの中性脂肪が120mgで安定。

〇70歳女性 販売店店員 60歳の時に脂質異常。65歳の時に血糖値170mgで糖尿病。68歳の時に140/80。
・食事で糖質を控える
・8秒ジャンプ
2年後
血糖値が150mgへ
ヘモグロビンA1cが8%から7%へ
血圧が130/70へ

〇49歳女性 スーパーの店員 40歳過ぎから糖尿病。ヘモグロビンA1cが7.5%
・野菜をたくさん食べる
・8秒ジャンプ6セット
・片足立ち運動
ヘモグロビンA1cが7%へ

たくさんの例をここで出すと、著作権を侵害するかもしれないので、少しだけ例を出しました。この本の効果の例も、単に血圧だけではなく、血糖値や脂肪などを書いてあります。患者の健康を見ると、単に血圧だけではなく血糖値や脂肪が関連しているというか、それが大事なのではないかと思います。


とにかく、伊賀瀬先生は言います。

「高血圧の改善には運動が絶対に欠かせません」

実際の8秒ジャンプのやり方や、注意事項や準備運動などは、この本を買ってみてください。

また、こういう本は買って読んだだけではだめで、読んだその日から、不完全でも実際にやってみることが大事だと思います。

私も8秒ジャンプを始めました。

 

その他で私がこの本で注目したところは、

 

「私は高齢の高血圧の患者さんには、最初は血圧を基準値内に下げるための薬は処方しません」

「薬だけに頼りすぎるのは危険だと私は考えます。・・・一つは、生活習慣の改善がおろそかになるためです」

しかし、もし、血圧を下げることが目的なら、クスリだけで下がれば、それが簡単でいはずなのです。やはり、今現在の血圧治療の基準とは違うものを、伊賀瀬先生は感じられているのでないか。

 

その他はQ&Aで面白い記述がありました。

・塩出しには納豆がベスト
・ヒハツというスパイスやゼラチン(コラーゲン)は血管にいい
・腹八分目と低温調理がいい(焦げた料理は少なく)

 

・このQ&Aの最後、つまりこの本の最後に、「降圧剤を飲みたくないのですが」という質問に対して、伊賀瀬先生は「そのことを率直に医師に伝えてみてください」という答えでした。

この言い方は、個人的には意味が深いと言うか、緩い答えだと思いました。深読みかもしれませんが。薬で血圧を下げるのは、本当はあまりよくないのではないか。

血圧の話その4(大動脈解離になったので)『薬・減塩に頼らない血圧の下げ方』

『薬・減塩に頼らない血圧の下げ方』
2023年3月7日第1刷発行
山口貴也

血圧の話その4(大動脈解離になった)

著者の山口貴也は山口醫院の医者です。
この本の特徴は、2023年3月7日第1刷発行と新しい点です。それが、副題の「最新医学データーが導き出した」につながります。


私は大動脈解離になりました。なので、一般論はさておき、さっそく、私が知りたい内容を検討します。

やはり問題は、高血圧でなく血管(動脈硬化)なのか。

「人の健康は血の巡りに左右されます。血管の老化が進むと人も老化する。・・・しかし、血圧が高くても長生きの方はたくさんいます。つまり血圧が高いことと、血管の老化はイコールではないのです」

「高血圧イコール動脈硬化ではなく、・・・薬を飲んで血圧をさげても、多くのケースでは動脈硬化を防ぐことはできません」

「高血圧治療の目的は、血圧を下げることではなく、動脈硬化の予防です」

「生活習慣の改善で血圧が下がると、循環器疾患(心臓血管疾患や脳梗塞)の危険性は下がる・・・ですが、薬を飲んで生活習慣が変わらなければ、副作用の危険性だけ背負い込み利点は何もないのです」

ここらの話が、今まで何冊かの血圧の本を読んで、私が知りたかったことです。そして下記のような小見出しに続きます。

高血圧よりも動脈硬化が問題
動脈硬化の原因「血管内皮障害」

「血管内皮障害」とは何か
「血管を広げることができなかったり、血管の壁に血中の物質がくっついてしまったり、血管の中で脂が酸化してしまったりする状態」

「血液の質も関わりがあります・・・血糖が高いと・・・赤血球の膜の性質が悪くても・・・炎症物資が多くなっても」

 

どうも「血管内皮障害」が問題のようです。さすれば、具体的にどうすればいいか。

高血糖動脈硬化をつくる。血液中の糖が高いと内皮細胞壁に引っ付きやすくなる。
・大量の酸化した脂質が動脈硬化の原因であり、問題はコレステロールより酸化しやすい体質である。
・酸化予防には、抗酸化物資の多い野菜や果物を食べると効果的です。

 

ビタミンDは、多くても少なくても動脈硬化になるが、現代人の多くは不足している。植物性でお勧めは、干しシイタケや乾燥キクラゲ。
・オメガ3を増やすことが動脈硬化予防には大切。
・もっとも重要な減量と食事改善
・運動は必要。急激な運動は突然死に注
・血圧を下げる食品は、ネギ類、梅酢、ニンニク、大根、そば、納豆、葉物野菜。
・腸内で作られるアミン類が、脳卒中心筋梗塞の最後のきっかけになる可能性。(この腸内環境の話が詳しくないので、この点をもっと知りたいと思います)

 

その他の内容を2、3ピックアップします。

・コーヒーを飲んで調子が良くなる人は、穀物や野菜が多いと調子が良くなる人です。コーヒーを飲むと胃が痛くなるなど調子が調子が悪くなる人は、動物性の食品が多いと調子が良くなる人です。中間の人もいるし、稀にタイプが周期的に変わる人がいる。

(このような言い方は、非科学的なようですが、こういうことを書く人は個人的な経験からは信用できます。

というのは私は医療関係の本を何冊か読みましたが、どうも医学は物理や電気のように法則でバシッと言えるものではなく、経済学みたいな総合的な学問のようです。それで医学の場合、有意差とかの言葉が多用されますし、薬が効くかどうかも%なんですね。つまり人によって違う。さらに、誤解を招くかもしれませんが、医学は、どうも法学のように権威の学問の傾向もあると思います。誰が言ったかということが重く見られるという意味で)

・血圧に関しては

昔は年齢足す90が正常血圧の基準でした。高齢者だと血圧が高いことは悪いことではない。心血管疾患のリスクは薬を飲んでも飲まなくてもあまり変わりはなく㊳、飲んで血圧をさげてしまうと死亡リスクがあがる。心血管疾患のリスクが高い場合は血圧の薬を飲むとリスクは多少さがりますが、生活習慣などほかのリスク要因を解決したほうが予防効果は高いのです。

 

(この㊳というのが巻末の参考文献で、本文中にデーターが書いてない場合につけられています。この本の副題の「最新医学データーが導き出した」のことだと思います)