血圧の話その6(大動脈解離になったので) 『高血圧は薬で下げるな!』浜六郎

『高血圧は薬で下げるな!』2006年6月5日11版発行 浜六郎

血圧の話その6

浜六郎先生の経歴は変わっていて、阪大医学部を出て大阪府衛生部を経て阪南中央病院に勤務しています。
その後に、独立医薬品情報誌を創刊したり、医薬品の情報収集や広報活動をしています。

しかし、『高血圧は薬で下げるな!』とは、なんとも過激な題名です。

実は、血圧の話その3で石原先生が、「降圧剤を急に服用を中止すると、反動的に血圧が上昇することがあるので、そうしたムチャは禁物である」と言って、「薬のやめ方を含めて参考になる」とこの本を紹介されていました。

それで、過激な題名のこの本を注文してみました。

確かにそのことについては、

「急に降圧剤をやめると、急激な高血圧が引き起こされる危険もあります。時間をかけて血圧をはかりながら降圧剤を減らし、血圧が上がる原因を取り除きながら、やがて完全に降圧剤をなくすことがいちばんよい方法です」以下、薬の種類や必要期間など具体的に書かれていました。

ところで、降圧剤はやめていく方がいいという、その元になったメインの主張はどのようなみのでしょうか。

まず、浜先生は言います。
「驚くべきことに、現在薬を処方している軽症・中等症・そして現在の基準では重症高血圧患者においてさえ、降圧剤で血圧を下げることによって寿命が延びたといえる確実なデーターは、日本でも外国においてもないのです」

もしこれが本当だとすれば、降圧剤が広く使われてから何十年もたつのに、不思議なことです。

 

さらに第2章で浜先生は、JATE研究、茨城県調査、NIPPON研究、福岡県久山町、秋田県大阪府八尾市の調査を引用します。

そして「NIPPON研究では、61歳以上の人でもさすがに上が180以上、下も110以上になると、心筋梗塞脳卒中が増えるという結果が出ています。しかし、この調査では、最小血圧が60〜・・・109で比べてみると、循環器の病気による死亡率でさえほとんど変わりませんでした」
最小血圧とは血圧の下のことです。
「とくに70歳以上では、上が160〜180、下が90〜100程度でも降圧剤は全く不要で、無理に血圧を下げるには及ばないことは確かです」

かなり過激な発言のように見えます。しかも、これは統計の分析です。だから、個人の特殊性はあります。例えば、極端な高血圧の人や血管が破れようとしている人は緊急に薬で血圧を下げる必要があることは前提です。私も大動脈解離をやったので、統計の一般的な答えとは別に、個別の事情はあるはずです。

 

また、浜先生は、この本で肥満や食生活や運動などにも言及しています。つまり、血圧を下げるなと言っているのでもなく、薬で無理に下げる必要はないと言っているのです。

だから、今まで読んできた他の先生たちと比べて、総論は真逆に見えたりしますが、現実の臨床は、さほどの違いはなかったりするのではないか。

例えば、愛媛大学教授の伊賀瀬先生は、
「降圧薬だけに頼るのは危険!生活習慣の改善がおろそかになるためです」と述べています。

しかし、血圧が原因なら薬で下げても生活習慣で下げても同じはずです。良い薬を選べばいいだけの話です。

また伊賀瀬先生は、「私は高齢の高血圧の患者さんには、最初は血圧を基準値内にさげるための薬は処方しません」と言いきっています。

山口醫院の山口貴也先生は、もっとはっきり言っています。
「薬を飲んでも飲まなくても病気になる確率は変わりません。しかし・・・生活習慣の改善で血圧が下がれば循環器疾患(心臓血管疾患や脳梗塞)の危険性は下がるということです。ですが、薬を飲んで生活習慣が変わらなければ、副作用の危険性だけ背負いこみ利点は何もないのです」

やはり真の原因は、血圧でなく、血管にありそうだと分かってきました。

しかし、『高血圧は薬で下げるな!』の題名はインパクトが強く、多くの人にも過激に感じると思います。なので、もう1冊、違和感のない題名の血圧の本を読んでみます。くどいですが、慎重に。