血圧の話その7 『「抹消血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる』

『「抹消血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる』

池谷敏郎
2019年11月30日第14刷発行

血圧の話その7

 

まず著者の自己紹介を引用します。

「池谷医院院長の池谷敏郎です。本書は、私が初めて書く「血圧」の本です。・・・私はこれまで「血管を鍛える」、あるいは「血管の健康」を題材ととした本を執筆したり、テレビなどで解説したりする機会が多くあったため、血管の先生というイメージを持たれている方もいらっしゃるでしょう」

血圧については
「高血圧は、動脈硬化を進める『最大の危険因子』と考えられているのです」

と「考えられている」という言葉で定説をそのまま述べています。

しかし、その直後の見出しでは『血圧は血管の状態を表す"鏡"』です。

 

 

血圧の新基準に関しては、定説通りの主張です

「やはり血圧が高い人ほど脳卒中心筋梗塞などの「血管事故」で死亡する率が高いことが明らかとなってきたのです。そしてその数値は「上の血圧が140、下の血圧が90」で、これを超えると急に、死亡リスクが高まるのです」

 

しかし、何冊かの本を読んだ私は、実は、この点に対してはすぐに疑問を言えます。

・例えば、80歳の人で上の血圧が150の人は、降圧剤を飲むべきでしょうか?

・この主張を裏付けるデーターや引用は、この本にはありません。新しい調査やアメリカの論文とか出たのでしょうか?

・また、「血管事故」の他も含めた全部の死亡率や自立度で考えるとどうなのか?

・年齢別ではどうなるのでしょうか?

・血圧別に、降圧剤を飲んだ人は飲んでない人より、死亡率や自立度が良いという統計はあるのでしょうか?

などの疑問はあります。

しかし、具体的にどうすればいいのか、となると、池谷先生も、今まで読んできた先生方と同じなんです。この血圧の基準についてそれぞれ考え方は違いますが、具体的な方法は、食べ物と運動なんですね。

さらに、池谷先生の特徴は、血圧を下げるには「末梢血管を開くこと」です。

 

そのために食べ物では、
・LTP(ラクトトリペプチド) ブルーチーズやゴーダチーズや米麹

ブルーチーズは青カビのチーズで塩分も強いし癖があります。ゴルゴンゾーラチーズを買いましたが、これはイタリアのブルーチーズの一種です。実は、私は好きです。ゴーダチーズというのを始めて意識して買ったのですが、外見は普通のチーズで値段もブルーチーズより安いです。私の買ったのは、オランダ製でしたが、臭いの癖は少しありました。


・GABA(ギヤバ)トマトやお茶、大豆、大豆もやし、きのこ類、発芽玄米
・ケセルチン タマネギ、アスパラガス、お茶
EPA(エイコサペクタエン酸)イワシやサバなどの青魚

運動では、ゾンビ体操など。ゾンビ体操は池谷先生のオリジナル体操です。伊賀瀬先生の8秒ジャンプに近い体操のようです。

 

 

それでは、池谷先生は具体的な降圧剤の投与については、どう言っているのか。

 

「1〜2か月の間、食事や睡眠を良好に保つようにしていても高血圧が続くようであれば、まずは薬を使って「安全」を確保した後で、今度は薬を飲まなくていいようにさらなる体質改善、生活改善をしていきましょう」と言っています。

具体的な方法は、今まで読んできた他の先生方もそうですし、降圧剤に否定的な先生と比べても、正反対とか真逆の結論ではなく、似ています。つまり、具体的なやり方は、どの先生の結論も似ています。

しかし、もし血圧が真の原因であれば、
つまり「120/80未満の場合がもっとも循環器病のリスクが低い」というのが本当であれば、120以上の人はすぐに薬で下げればいいはずだと思うのです。

さらに池谷先生「さらには薬を飲んでいるから大丈夫と安心してしまうのではなく、薬を飲んでいても生活改善は不可欠です」と述べています。

高血圧が主たる原因であるなら、薬で高血圧が下がれば、それでいいはずです。降圧剤をやめていったり、生活習慣の面倒な指導はいらないはずです。それとも降圧剤の副作用は意外に大きいのでしょうか。

たぶん、池谷先生も他の先生方も、薬で血圧を下げているだけの患者を多く診てきたのだと思います。また血圧の薬をのんだ人と飲んでいない人の全体的な健康についても、多くの人を感覚で比べることができているのかもしれません。

そのため、食事や運動など、患者にとっても医師にとっても面倒なことを指導されているのではないでしょうか。そうだとすれば、ありがたいことです。

 

 

私は今まで7冊の本を読んで、どうも本当の問題は、血圧ではなく血管にあるのではないかと思うようになってきました。

この意味で池谷先生の「血圧は指標である」、「末梢血管を開くこと」というような言葉が、本質をついているかもしれないと思いました。

つまり、高血圧が主な原因であり、池谷先生の視点では、末梢血管を開くことがその血圧を下げることだというより、末梢血管を開くことが動脈硬化の改善になるのではないかと、高血圧はその原因というより、むしろ動脈硬化の結果か指標ではないのかと。